正式には SC2010 期間中にアナウンスされるだろうが、以前からの予想通りに中国国防科学技術大学が開発した天河1号(1A)が 2507 TFlops(2.507PFlops) で TOP500 2010 November の世界一になる見込みである。CPU + GPU システムの Linpack 性能効率は5割弱と仮定して、場所、電源、空調システムを確保した上で他国の動向を観察し、最終的に他を上回る台数を短時間で揃えられたところの勝ちになる。日本のスパコン予算は中国を上回っており、迅速な意志決定能力があれば 2010 年 11 月に TOP500 の一位奪回も十分可能であっただろう。2011年以降は天河1号の成功を見習って、米、中国、欧州などが激烈な開発競争に入ることが予想されるので、2012年に神戸のスパコンが稼働しても、ノード数や電力消費量等が小規模のスパコンに Linpack 性能で負けてしまうことも十分考えられる。また東工大の TSUBAME 2.0 が電力や空調の制限に苦しみつつも日本初のペタ越えスパコンとして、久々に日本勢として上位にランクインする予定(Green500 List はかなり上位が期待できる)。
Linpack のベンチマークはスパコン競争の第1回戦なので、重要なのはその後アプリケーションの開発競争になる。以前も書いたようにTSUBAME 2.0 のような CPU + GPU ハイブリッド型スパコンにおいて MPI 下で CPU + GPU が協調して非常に大きな行列の行列積や Cholesky 分解を並列に行う高性能なライブラリがあれば、非常に応用範囲が広がっていくだろう。一方で CPU + GPU がそれぞれ得意な分野の計算を同時に並行して行う新型のアプリケーションの登場も多数予定されている。