地震の話

某ブログでしたコメントについて個人的にメイルを頂いたので、ここで触れるのも変ですがもう少し詳しく書きたいと思います。

数年前に専門家の先生方の中で地震、地盤、建物について勉強する機会がありました。ちょうど阪神大震災の調査、分析結果がまとめられた頃でした。耐震設計基準では、基本的に地震時に建物かかる水平の揺れを最大 200 ガル = 0.2G と想定しています。例えば、地震と建築(大崎著、岩波書店
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/400420240X/qid=1118592215/sr=1-4/ref=sr_1_10_4/250-9501250-0354653
の 8 ページによると、関東大震災の東京での最大加速度は300ガルと推定されているので、関東大震災程度の地震が来ても倒れないようにするというのが耐震基準の前提としてあったと思います。

1973 年に公開されて大ヒットした映画”日本沈没
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0000A4HS4/qid=1118592783/sr=1-2/ref=sr_1_10_2/250-9501250-0354653
では、劇中の東京大地震での被害が死者、行方不明者 360万人!!!になっています。この映画は耐震工学(前掲書の大崎氏など)や地球物理学などの専門家をスタッフとして参加させて、様々な検討や試行錯誤を重ねたようです(DVDの特別音声のスタッフの対談を聞いてもわかります)。
前掲書の 8, 9 ページによると、この映画のために架空の地震動も作成しており、最大加速度を490ガルにしたそうです。つまり当時では、超巨大地震として想定された規模は490ガルだったことになります(ここが重要)。

1995 年に発生した阪神大震災では規模は M7.2 ですが、例えば神戸海洋気象台では、水平方向(南北)818ガル!!!, 水平方向(東西)617ガル!!!, 上下方向332ガル を記録しました。ここで関東大震災程度の揺れに耐えられれば良いという前提は崩れてしまいました。さらに従来はあまり重視していなかった、上下方向の揺れも無視できないこともわかるわけです。
以前テレビで見ましたが、首都高速は従来関東大震災クラスには耐えられるようにしていましたが、阪神大震災の後に今度は阪神大震災に耐えられるように相当補強したようです。当然それ以上が来れば保証できないことは公団側も認めてました。

ところがこれで終わりではなく、例えば昨年10月に発生した新潟県中部地震では、川口町で3次元の合成で1722.0ガル, 水平方向(南北)1141.9ガル, 水平方向(東西)1675.8ガル, 上下方向869.6ガル を記録しています。上下方向だけで阪神大震災兵庫県南部地震)を超えてしまいました。地震とマンション(西澤、円満字著、ちくま新書)の 191 ページによると、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4480058737/qid=1118594817/sr=8-2/ref=sr_8_xs_ap_i2_xgl14/250-9501250-0354653
島型原爆(15キロトン)の爆心地から 500mの地点で受ける爆圧は 1.2G 程度なので、それよりもはるかに大きいことになります。逆に言えば木造は燃えてしまうので駄目ですが、 RC 建造物ならばこの距離での原爆の衝撃波には耐えられることになります(実際に広島、長崎では多くの RC 建造物が残っていた)。つまり前掲書によれば、耐震 = 耐爆 = 耐核ということになります。

最近では、長周期地震の危険性も指摘されています。
地震が起きた時、あなたは大丈夫か―地震波が巨大構造物を襲う NHKスペシャル
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4764820218/qid%3D1118540330/250-9501250-0354653

専門家の方によると、これから起きる東海、東南海、南海地震や首都圏直下型地震に際して、これまでの経緯から言っても何が起きるかを正確に予測することは難しいそうです。また防災対策だけでなく、東京大地震のときに諸外国がどういう行動を取るか真剣に考えないといけません。